焦点 質的アプローチが変える臨床研究
臨床研究におけるナラティヴ・アプローチ
野口 裕二
1
1東京学芸大学教育学部総合社会システム研究室
pp.413-422
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100214
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ナラティヴ・アプローチとは何か
臨床のさまざまな領域で,「ナラティヴ」への注目が高まっている。家族療法の領域から「ナラティヴ・セラピー」が生まれ(McNamee & Gergen,1992),プライマリ・ケアの領域からは「ナラティヴ・ベイスト・メディスン(NBM)」が生まれ(Greenhalgh & Hurwitz,1998/2001),看護の領域でも,家族看護や地域看護,ターミナル・ケアの領域でナラティヴへの関心が高まっている。慢性疾患のケアにおいて,患者の語る病いの物語に耳を傾けることの重要性が改めて認識されるようになってきたのである(野口,2002)。
以上の動きは,新しい援助実践としてナラティヴ・アプローチが注目されていることを示しているが,ナラティヴ・アプローチは単に新しい援助実践としてのみ意味をもつのではない。それは研究実践においても重要な意味をもつ。現象をナラティヴな視点から捉える方法はすべてナラティヴ・アプローチと呼ぶことができる。ナラティヴ・アプローチは「援助」だけでなく,「研究」という実践においても新たな世界を切り開く。
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