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はじめに
千葉大学看護学部看護教育学教育研究分野は,看護に関わる現象を構成する人間のさまざまな行動や経験を解明している。そのなかに,看護学実習中に学生の行動を概念化した研究(山下ら,2003)がある。この研究成果は,筆者らの看護学実習において学生はどのような行動を示すのかという疑問に答えると同時に次なる疑問をもたらした。それは,看護学実習中に示す行動を学生自身がどのように知覚するのかという疑問である。
この疑問に答えるために,「看護学実習における学生の行動と知覚の比較」という課題に取り組みはじめた。この取り組みは,「複数の質的研究の成果は,どのような方法により比較できるのか」という問いへの答えを探すことから始まった。この過程において,社会科学の比較研究や概念分析などの方法を検討した。しかし,いずれも,求める成果をもたらすという手応えを感じさせなかった。1年半の検討の末,ついに「メタ統合(Metasynthesis)」にめぐり会った。
メタ統合とは,テーマに共通性のある一連の質的研究の成果を比較・統合し,そのテーマに関連する本質的な要素や概念,理論的な記述の発展と大理論や中範囲理論などの新たな発見を導くための研究デザインである(Noblit & Hare,1988;Schreiber et al.,1997;Sandelowski et al.,1997;Beck,2002:Polit & Beck,2004)。この研究デザインは,1980年代より用いられている(Schreiber et al.,1997)が,現段階において,これを用いている看護学研究者はごく少数である。
そこで,本稿においては,メタ統合を用いた看護学研究を概観し,その現状と今後の課題を検討する。
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