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はじめに
これまで,看護経済に関する海外シラバスや国内外の書籍をもとに,「看護経済学」を構成する要素の抽出が試みられてきた。結果として,看護経済に関わる要素は,経済学の基礎や分析手法,労働市場と医療従事者の養成,ヘルスケア提供組織,さらに政府の政策介入と政策効果,コスト管理や会計に大きくまとめられ,なかでも政府によるヘルスケア政策の位置づけの大きさについて論述された。
なぜ,経済学の1つとして,「医療経済学」という学問が論じられるのか。そこには,「医療」というサービスが,一般の財・サービスと異なる特性を多くもつことから,これらと同じように市場での自由な取引に任せては,有効な資源配分が達成されない,という根本的な問題が存在する。それゆえ,医療サービスについて有効な資源配分が達成されるべく,政府によるさまざまな政策介入が行なわれるのである。医療サービスの市場において,政府が実践する政策の下,ヘルスケア提供組織すなわちサービスの生産者や,患者等サービスの消費者はどのような行動をとるのか,政策変更があった場合にはどのように行動を変えるのか,それは医療経済学における重要な研究テーマの1つである。
それでは,「看護経済学」は1つの学問として成立しうるのか。この問題に答えるには,「看護」というサービスが,医療サービスと同様,一般の財・サービスと区別されるべき性質が存在するのか否か,存在するのであれば,それはいかなる性質なのか,検討することが欠かせない。本稿では,まず医療サービスの特性と政府の政策介入の意味を踏まえた上で,いくつかの文献と統計資料を用いながら,看護サービスの特性について分析する。そして,現在すでに実践されている看護に関する政策介入や,前稿(本号7ページより)までに提示されてきた,看護経済に関わる要素について論じ,「看護経済学」の成立可能性を考察する。
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