特集 公衆衛生の経済学
医療経済学と公衆衛生
髙原 亮治
1
1厚生省大臣官房厚生科学課
pp.4-9
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902010
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公衆衛生学校と医療経済学
意外な印象を持たれるかも知れないが,医療経済学は北米の公衆衛生学校(大学院)を中心に拡大していった学問領域である.米国の経済学は,その制度化,すなわち,教育内容,教育課程などの内容が,大学や教授によらず均質化されているところに特徴があり,例えば入門期用のミクロ経済学の教科書やコース名はIntroduction to Microeconomic,コース番号はEC100というように規格化されている.Introductionの次は,“Principles of”となり,さらに“Analysis of”といった構成となっており,それぞれの内容はほぼ規格化されている.
医療経済学は,経済学としては,そのほとんどの部分が応用ミクロ経済学の領域に属すものである.しかしながら医療経済学の基礎領域をなすものは,単に(ミクロ)経済学ではない.少なくとも,疫学を中心とした医学医療の内容,医師や看護婦などの医療関係職種の労働市場などの特殊性,病院の機構,保険などに対する他産業にみられない規制などの政府の関与,さらに各国独自の医療費制度などに対する知見を要する,ミクロ領域を中心とした経済学,疫学を中心とした医学,医療制度といった,それ自体はそれぞれありふれた領域ではあっても,これらが統合可能な教育,研究環境は北米を中心とした公衆衛生学校であり,そこで,近代的医療経済学が成長したことに不思議はない.
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