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はじめに
日本で看護経済学という言葉が使われはじめてからはや10年,経済不況の歩みとともに保健医療福祉分野においても「経済」という言葉が次第によく聞かれるようになった。今や,一般企業では昔から当然のごとく存在している経営・経済の概念が,保健医療福祉分野においても取り入れられてきた。この現象は,それまで特定の分野内のみに限定されていたコンテンツ(内容)が,まるでバブルがはじけて外部に分散したかのようである。
この経済不況に相反して急成長したのが,看護系大学である。1990(平成2)年には,4年制大学はわずか11校のみで,修士課程5校,博士課程3校のみであった。それが10年後の2000(平成12)年には4年制大学84校,修士課程35校,博士課程11校となった(図1)。これらの数値は年々増加傾向にあり,2005年4月現在の4年制大学は126校である註1)。これは,看護教育がこれまでの厚生労働省管轄の看護専門学校から,文部科学省管轄の高等教育機関へとシフトしていることを表している。
高等教育機関での教育が推進されるということは,そこに学問体系としての位置づけが確立していることが前提である。一般に○○学といわれる学問領域,例えばpsychology(心理学),sociology(社会学)などに代表されるような“─ology”といわれる学問分野では,研究によりその学問体系の基盤が整えられている。高等教育機関においてそれらの学問をprofess(明言する)がゆえ,そのような人々が“professor”と呼ばれている。
看護教育が高等教育機関へシフトしていくということは,“profess”していくことを前提としている。つまり,看護から看護学へ,さらに看護学を構成する分野における学問体系の樹立・発展が求められている。それは,分野の名称にただ「学,─ology」をつけることではなく,それなりの学問体系を提示することである。本研究チームでは,保健医療福祉領域における看護学の分野で看護経済学の学問体系を位置づけるべく本研究に精力的に取り組んできた。今回の焦点ではその全容を段階を追って論述してある。
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