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医療経済評価は,多くの国々において医療技術の保険償還の可否の判断や,ワクチンや健診などの予防技術導入の判断などの政策決定に利用されている.特に抗がん剤などの高額薬剤については,英国のNICE(National Institute for Health and Care Excellence),カナダのCADTH(Canadian Agency for Drugs and Technologies in Health)やpCODR( The pan-Canadian Oncology Drug Review),オーストラリアのPBAC(Pharmaceutical Benefits Advisory Committee)などの公的機関において,臨床エビデンスとともに経済エビデンス(費用対効果)を評価し,それに基づいて診療ガイダンスを作成したり,保険償還の可否を判断したり,価格設定の参考としている.すなわち,臨床試験により有効性が確認された薬剤でも,費用対効果が悪ければ,その使用を推奨しないという判断が下される場合がある1).
わが国においても中央社会保険医療協議会(中医協)において,革新的な医療技術の取り扱いを議論した際などに,医療保険制度において費用対効果の議論を行っていくべきとの指摘が数年前よりたびたびあった.これらの指摘も踏まえ,平成24(2012)年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見において,「保険適用の評価に際し費用対効果の観点を可能な範囲で導入することについて検討を行う」こととされた.これを受けて平成24(2012)年度より中医協に費用対効果評価専門部会が設置され,政策利用の可能性について検討が行われている.約2年間にわたる議論の結果,当面の間,基本的に医薬品,医療機器を評価対象技術として,検討を進めていくこととされたが,一方で先進医療として実施している医療者などの技術の一部に,医療経済評価(費用対効果評価)の考え方を適用できるのではないかという指摘もあり,先進医療として実施している医療者などの技術についても費用対効果評価のあり方を検討することとなった2).
本稿では,先端医療などの医療経済学的評価の手法と具体的事例,ならびに,政策利用に向けた課題について述べる.
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