連載 ウイルスの一生で理解する遺伝子の最新基礎知識【3】
宿主細胞内での増幅―RNAワールド仮説と遺伝子治療
佐藤 聡
1
1University of Cambridge, Centre for Protein Engineering
pp.253-260
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100015
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「生命」への探求
ヒト遺伝子の全解析がほぼ終了した頃に出席した学会の基調講演で,印象に残っている話があります。それは,「ヒトとチンパンジーの遺伝子は約98%が共通,バナナとは50~60%が共通であった。つまり,分子生物学的にはそれがヒトである」という内容でした。現在では生命科学の進歩によって,地球上の生命はDNAを生命の設計図として使用し,さらにその設計図を記述する仕組みもまったく同じであることが解明されました。A,T,G,Cという4個の記号を使い20種類のアミノ酸を規定し,どの記号の組み合わせがどのアミノ酸を規定するのかまでもが,まったく共通しているのです(本誌38巻1号の連載第1回に詳細があります)。私たちは,「生命」の設計図が解き明かされつつある時代に生きています。先のバナナの話は少し極端ですが,遺伝子の視点からみると私たち人間を含めた「生命」の姿はこれまでとは違ってみえてくるかもしれません。
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