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妊娠中の体重管理指針の変遷
妊娠中の体重管理の指針についてはさまざまなものがつくられている。世界的に最も使われているのは,米国によるIOM(Institute of Medicine of the National Academies)のガイドライン(2009)1)がある。一方,日本では,歴史的に独自の指針が用いられてきた。
1998年に制定された,妊娠高血圧症候群の予防を目的にエネルギー摂取量を比較的抑制する「妊娠中毒症の栄養管理指針(1998)」2)にて,BMI<18では10-12kg,18≦BMI<24では7-10kg,BMI≧24では5-7kgが推奨された。しかし,1990年代,2000年代と日本では低出生体重児率の増加が続き,この推奨が厳格すぎることが一因の可能性があるとの指摘もあり,厚生労働省(健やか親子21推進委員会)が作成した「妊産婦のための食生活指針(2006)3)」にて,BMI<18.5では9-12kg,18.5≦BMI<25では7-12kg,BMI≧25では5kg程度の個別対応,が推奨された。しかし,2015年頃になっても低出生体重児率の高止まりの改善が見られず,こちらの推奨でもまだ体重増加量の制限が厳しすぎるのではないかとの指摘もあった。そこで日本産科婦人学会は,2019年には1990年の推奨を取り下げ,新たに「妊娠中の体重増加の指導の目安」(2021)4)を発表した。同年に,厚生労働省から発表された「妊娠前からはじめる 妊産婦のための食生活指針」(2021)5)に本目安は反映され,広く周知された。最新の推奨では,妊娠中の体重増加量はBMI<18.5では12-15kg,18.5≦BMI<25では10-13kg,25≦BMI<30では7-12kg,BMI≧30では個別対応(5kg程度)が目安となっている。なお,体重増加量には個人差があることから,「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも充分ではないと認識し,個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける」という付記がされている6)。
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