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最近,日本でも“evidence based medicine”という用語をしばしば見聞する.多くの日本の妊婦は,妊娠中に体重増加を制限すれば妊娠中毒症や巨大児を予防できるので「体重増加制限が常識」と考えている.妊婦に体重増加制限を指示すれば妊娠転帰に恩恵があるという証拠はあるのだろうか.皮肉なことに,独断的に決めたある体重増加以下に制限しても妊娠中毒症や巨大児が原因の分娩進行停止は減少しないという証拠が多数ある.米国産婦人科学会(ACOG)が共同で作成しているreview(約8,000のトピックスが取り上げられ,随時改訂されている)を中心にこの問題を考察する.
1. Williams Obstetrics. 21版
1)歴史的変遷
20世紀前半までは,妊娠中の体重増加は9.1 kg未満に制限することが勧められていた.その理由は,妊娠中の高血圧性疾患や巨大児(結果的に器械的分娩となる例が増加)を防ぐと信じられたからである.その後,1970年代までは早産や子宮内発育制限を防ぐために11.4 kg以上増えるように鼓舞された.1990年代になり米国のInstitute of Medicineから妊娠前BMIが正常の場合は11.5 kgから16 kgの増加が推奨されるようになり,米国小児科学会(AAP)とACOGもこの指針を承認している.英国では1991年に6.8 kgから11.4 kgの増加を推奨(正常BMI妊婦)(Committee on Medical Aspects of Food Policy)(Report of the Panel on Dietry Reference Values)するに至っている.
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