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2015年を境に動き始めた日本社会
2015年4月に文部科学省は「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」とする通知を発出し,2016年に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」を発表・配布,そして2017年には,いじめ防止対策推進法「いじめの防止等のための基本的な方針」において「いじめを防止するため,性同一性障害や性的指向・性自認について,教職員への正しい理解の促進や,学校として必要な対応について周知する」と教育現場へ明確に対応を求めていると既に本連載でお伝えした(連載第2回)。2015年は文部科学省が通知を発出したことや同年11月には東京都渋谷区と世田谷区による同性パートナーシップ制度の創設,さらにはライフネット生命保険会社や複数の保険会社が一定の条件を満たす同性パートナーは死亡保険金の受取人になることを可能にするなど,わが国のLGBTsに関する官民の取り組みが開始されたエポックメイキングなタイミングとなった。
この頃を境に,文部科学省のみならず各地の教育委員会がLGBTsに関する教員研修を主催するなど,教育現場への働き掛けがより積極的にされるようになってきたことは周知の通りである。その一方で,教員自身がLGBTをはじめとするセクシャルマイノリティについてどのような認識でいるのか,対応経験があるのかといった実態調査は十分に実施されてこなかった。また,HIV予防教育のさらなる推進のためにも性的指向と性自認の多様性に関する教員の意識や経験について明らかにすると共に,性の多様性という観点から学校での取り組みを推進していく必要性については連載第6回でお伝えした通りである。前回に引き続き,全国36自治体の2万1634人の小中高校および特別支援学校に勤務する教員から回答を得た全国教員調査1, 2)の結果について報告する。
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