連載 多様性があたりまえの未来へ 国内最大規模のLGBTs調査結果から・6
小中高校・特別支援学校の教員におけるLGBTsの認識(1)
日高 庸晴
1
1宝塚大学看護学部
pp.704-708
発行日 2021年9月25日
Published Date 2021/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201884
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教員調査の意義と必要性
前回はわが国のHIV/AIDS発生動向について疫学データをひもときながら解説した。1990年代後半から2000年代にかけて,主に全国の都市部で男性同性間性的接触を感染経路としたHIV感染が拡大した。筆者らが2011年に実施したゲイ・バイセクシュアル男性対象の全国インターネット調査(有効回答数3685人)では,これまでの学校教育で男女間,男性同性間のエイズ予防教育を学んだ経験についてそれぞれ尋ねている。10代の87.9%が男女間の予防について学んだ経験があった一方で,男性同性間のそれは24.1%に留まっていた(図1)。
また,2007年(有効回答数6282人),2008年(有効回答数5525人),2011年調査で尋ねたいじめ被害経験率をHIV陽性者とそれ以外で比較したところ,明らかにHIV陽性者にいじめ被害を経験した者が多いことが示された(図2)。性的指向を含めセクシュアリティに関連する言葉で学齢期の早い段階に受けたいじめ被害は,決定的に自尊感情を傷付け,その後の人生に影響を与えると考えられ,自尊感情の傷つきは予防的保健行動の促進にあたって阻害要因になる可能性があり,適切で的確な情報提供といじめの発生防止ないしは早期解決が望まれることは言うまでもない。
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