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中枢神経の可塑性
神経細胞は,何らかの要因により一度死滅すると二度と再生しないと言われている.そのため,死滅した神経細胞群が担っていた機能は,何らかの介入を行わない限り障害を受けたままとなる.このような神経細胞群の死滅による機能低下が明確となるのは,一次運動野,一次体性感覚野,一次視覚野などといった一次領野の損傷による場合であろう.なぜならば,これらの領域は,連合野の領域とは異なり,比較的脳領域と特定の機能との対応関係が明確だからである.運動機能で言えば,一次運動野は,その領野内にそれぞれ下肢,上肢,顔の運動といった支配領域が明瞭に分かれるという体部位再現性をもつ.そのため,一次運動野を含む脳領域に損傷を受けた場合,損傷を受けた領域が担う四肢に運動麻痺が生じることになる.そして,リハビリテーションに求められるのは,損傷により失われた機能を脳の他領域が代償することを促進させ,再び脳と四肢(効果器)の関係性を築くことである.
脳卒中後に四肢に運動麻痺が生じた場合,上述の脳と四肢との関係性が崩れ,脳からの運動指令が効果器に伝わらず適切に運動することができなくなる.では,崩れてしまった脳と効果器の関係性は,再構築することができるのだろうか? つまり,脳のある領域は別の領域の代わりになれるのだろうか? Sadatoら1,2)は,全盲の視覚障害者の視覚領野がどのような働きをするかを調べるために,点字を読んでいるときの脳活動を神経イメージング装置であるfunctional MRIを用いて調べた結果を報告している.その結果,全盲患者は,点字を読んでいる最中に体性感覚野ではなく後頭葉が賦活することを報告した.点字は,指先で紙面の凹凸パターンを認識し「読む」のであり,情報は触覚情報となる.つまり,視覚情報を処理する後頭葉が,視覚情報が全く入力されなければ,触覚情報を処理するように変化していたということである.ただし,このように感覚モダリティが視覚から触覚に変化できるのは,16歳までに全盲になった患者に限られるようである2).
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