連載 りれー随筆・420
助産師という仕事を32年経験して,今思うこと
齊藤 智孝
1
1さいとう助産院
pp.76-77
発行日 2020年1月25日
Published Date 2020/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201452
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生まれてきてくれてありがとう
私は高校3年生の時に姉の出産に立ち会い,「命の誕生」に心から感動しました。女性が命懸けで命を産むこと,産めること,そして何より赤ちゃんが生きる力を持って生まれてくることに「すごすぎる,すごすぎる」と感動しました。その後,姉も無事であり,赤ちゃんも無事に生まれてくれたことに安堵して涙が止まらなくなり,「良かった,うれしい」と,姉の労を心からねぎらい,喜びを共有しました。
この時が助産師になりたいと思った瞬間で,これこそ助産師の仕事の本質だと考えています。産む人を全人的に丸ごと受け止めて尊重し,寄り添い,支えて,見守り,共に考え,時には導いていく。赤ちゃんは,生きるための力を持って必死でおなかから生まれてきてくれます。なのでどういう状況であっても,「生きる力を持って,生まれてきてくれてありがとう」と喜び,その生命力に感動する。この生命力こそ私の助産師としての仕事の原動力,パワーの源であり,醍醐味,やりがい,達成感,継続の力にもなっています。
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