鏡下耳語
臨床と生理学—正常と病気の不連続性について
大和田 健次郎
1
1東京学芸大学
pp.522-523
発行日 1969年7月20日
Published Date 1969/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207314
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正常と病的状態とは不連続で,直接交わることがないというのが私の考えである。文献をしらべたことがないから,他にこのようなことをいう人があるかどうかは知らない。正常人が病気になるのであるから,時間的には連続であるかもしれない,また病気も回復して正常になるから,これも連続のようである。
しかしよく考えてみると,正常機能としてはある経過があるように,病的状態になつたときは,それぞれ正常とは違つた経過を辿るに相違ない。この間に法則的に何かの関係があることは考えられない。両者に共通するものは,生きているということだけである。障害を受けた組織が変つていく過程は,正常状態の研究からは推測できないであろう。このことをつきつめて考えると,正常状態の機能をいかに精細に実験してみても,病的状態に関する知見は得られないことになる。
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