連載 りれー随筆・344
大切にしたい心のしなやかさと美しさ
野澤 昌子
1
1たんぽぽ助産院
pp.680-681
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102553
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助産師の凛とした使命感
今年に入って早々,結婚式の招待が相次ぎ,こんなにも重なることがあるのかと驚いている。晩婚化が進む日本だが,お招きいただいている新婦の年代は20代から40代までと幅広い。気がついたら,招待客の中では年長のほうに近くなってしまったので,スピーチの依頼も多くなる。そうなると,日本人の正装である着物の出番である。
思い返せば,24時間お産に明け暮れていた数年前までは,着物とはまったく無縁の生活を送っていた。親戚の結婚式の当日,着物に袖をとおそうとした瞬間にお産の電話が鳴り,それ以来,残念ながら着物はお蔵入りとなってしまった。その頃の私は,どうせ着物を着たら窮屈で不自由だし,お産があってよかったと思っていたくらいである。私の場合は,まだ着物を着ていなかったからよかったのだが,現在自宅出産をしている知人の助産師は,可愛い末っ子の小学校の入学式の日,着付けもヘアセットも済ませて,さあ学校へ出発というところで,お産の連絡が入り,着物を脱ぎ捨ててお産に向かったのだそうだ。これには私も切なくて,さすがに涙が出た。
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