連載 思い出すけっち[あの人、あの時、あの言葉]・7
しなやかな感性の大切さを教えてくれたTさん
冨野 多津子
1
1国立療養所松戸病院緩和ケア病棟
pp.646-647
発行日 1989年7月1日
Published Date 1989/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922308
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病名を知って入院してきたTさん
Tさん(55歳)は,私がまだ外科病棟に勤務していた時に,肝臓癌の手術を受けた患者さんでした.その後数回の入退院を繰り返していて,病名や病状についてはある程度の認識があったようです.ところが奥さんは,Tさんが病状を楽観視していると感じて,主治医に本当のことを話してほしいと希望されていました.真実を知ってもらった上で,妻としての援助をしようと考えていたようです.
主治医から病状説明を受けたTさんは,「病状についてはよく理解できました.私は尚かつ奇跡を信じるし希望も持ち続けます.でも先生,患者に病状を100%知らせるのは問題ですよ」と言い,患者があくまでも希望をなくさないような話し方が必要なことを指摘していました.
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