連載 災害時の母子保健 妊産婦を守る助産師の役割・3
被災地で,助産師さんが必要とされた理由
吉田 穂波
1
1国立保健医療科学院生涯健康研究部
pp.324-327
発行日 2013年4月25日
Published Date 2013/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102449
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普通の人へのケア
私を被災地支援活動に迎え入れてくれた日本プライマリ・ケア連合学会では,その人をトータルに見る,つまり,病気の部分だけではなく家族背景や仕事のストレス,人生において幸せかどうかまでを考えて診療をする人たちに多く出会いました。この学会の東日本大震災支援プロジェクト(PCAT)は,今まで救急救命が中心だった災害医療に,「普通の人へのケア」という視点を入れた,国内では初めての災害復興支援チームでした。
震災2週間後から地元のつてをたどって次々と家庭医たちが被災地に赴き,壊滅状態だった被災地での診療にあたりました。東北地方では日本のどこでも見られるように少子化を反映して妊産婦・乳幼児が少数派で,日ごろから産婦人科医・小児科医不足でも悩んでいました。災害の時はなおさら,そんな少数のことにかまっていられないという状況になり,どうしても妊婦さんや赤ちゃんの安全・安心面には目が向けられていなかったのです。私たちの妊産婦支援プロジェクト(PCATの中の妊産婦支援部門であるPCOT;Primary Care for Obstetrics Team)では,そのような状況に危機感を抱き,震災後長期にわたって継続的に助産師と医師を被災地に派遣し,現地の妊婦さんや産後のお母さんたちのサポートに努めてきました。
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