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阪神・淡路大震災でわが国の災害医療対策がお粗末であることが露呈し,これを契機に災害拠点病院の設置,広域災害・救急医療情報システムの導入,緊急医療チーム派遣体制の整備,災害医療教育・災害訓練実施など具体的な方策が打ち出された.わが国の災害対策は徐々にではあるが確実に充実しつつある.しかしながら,災害対策先進国であるスイスなどに比較すると依然としてかなり遅れているといっても過言ではなく,本誌でこの特集が組まれた背景には,すべての医療従事者は災害医療についてもっと理解すべきとの考えがあるものと思われる.
日本赤十字社の災害救護体制
日本赤十字社(以下,日赤)は災害救護活動(J1)を本来の使命としている.災害の発生にあたっては,災害救助法の適用の有無や行政機関からの要請の有無にかかわりなく,赤十字の基本的原則に従って,迅速な救護活動を展開すべきとし,長年にわたり多種多様な自然災害や人為災害で救護活動を展開してきた.日赤が災害救護活動を実施するうえでの利点および特徴は,過去の多くの災害救護の経験,全国の日赤施設の組織力を利用した迅速かつ継続性のある救護体制,および自己完結型救護(J2)の実践などが挙げられる1).
災害時に行う日赤の救護活動は,①医療救護,②救援物資の備蓄と配分,③血液製剤の供給,④義援金の受付と配分,⑤その他災害救護に必要な業務である.医療救護の内容は医療,助産および死体の処理で,その具体的範囲については,被災地における応急救護の範囲内に限定し,被災により機能を失った地元の医療機関に代わって「医療の空白」を一時的に埋めるものとしている.「医療の空白」とは,被災により交通が途絶し医療の途が閉ざされたり,医療機関自体が被災し診療機能を失ったり,地元の医療機関が一時に診療できる患者数をはるかに上回る多数の患者が発生した場合をいう.
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