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はじめに
近年,健康志向の高まりや出産に対する意識の向上,さらには妊婦運動の安全性の立証1-9)等により,生活習慣の中に何らかのエクササイズを取り入れる妊婦が増えている。運動の種類はさまざまであるが,その実態を調査した研究は見あたらない。
本研究を行なった徳島県といえば阿波おどりで有名だが,糖尿病による死亡者が1993年から14年連続ワースト1位(2007年度はワースト7位になるも,2008年度から再び1位となる)という不名誉な称号を持っており,県は2005年,「糖尿病緊急事態宣言」を出し,官民一体で県民の運動習慣や食生活改善による予防啓発に取り組んでいる。その1つに,阿波おどりの動きを取り入れた「阿波おどり体操」の普及がある。
民謡踊りは昔から各地で行なわれており,踊りは自然に筋肉を使う運動である。特に阿波おどりでは,背部や大腿部の筋肉(脊柱起立筋,腸腰筋,臀筋,腹筋,大腿筋,下腿筋)が最大筋力の約40~50%もの強度で踊っており10),妊娠中のよい姿勢に必要な筋力(脊柱起立筋,殿筋,腸腰筋,腹筋)や,出産に必要な筋力(腹筋)を強化する。また阿波おどりの右手・右足,左手・左足のナンバ(同じ側の手足が同時に出る歩き方)の格好に,手足の屈伸運動を付けた姿勢は,農耕姿勢という日本人にとって自然な身体の動きであり,妊婦の運動として最適と思われる。
そこで妊娠・分娩が順調に,また快適に経過することを支援するため,地域の民謡踊り「阿波おどり」を取り入れた妊婦体操を制作し,さらに普及させ,妊娠期間中の健康づくりと出産に備えた体力維持管理に役立てたいと考えた。その準備として,妊娠中の運動効果への認識と運動の実態,また運動を普及させるための要件や要望を調査することにした。
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