特集 「三歳児神話」の検証
乳幼児を持つ母親への支援:母乳育児を中心として
本郷 寛子
pp.779-783
発行日 2001年9月25日
Published Date 2001/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902723
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子育てと現代女性の罪悪感
現在,子どもへの虐待や思春期の少年犯罪などのさまざまな社会問題を「乳幼児期の母子分離」「母乳育児をしなかったこと」すなわち「母性の欠如」と結びつける論調があり,他方「母子の密着育児」「母乳育児へのプレッシャー」すなわち「母性の押し付け」が問題の根源だという一見正反対に見える見解も示されている。どうやら人によって定義の違う「母性」といった言葉が誇張されて議論されているようだ1〜3)。
小さい子をかかえた多くの現代女性はいろいろなことに罪悪感を感じ悩んでいる4)。「母乳で育てられなかったこと」「母乳がいつまでもやめられないこと」「子どもを預けて働いていること」「外で働かずに家で子育てだけをしていること」。それらに共通するのは,世の中の「〜すべき」という理想(もしくは自分の中にある「理想の女性像」)に自分が達していないという思いである。「育児に専念すべき」というアドバイスも「子どもを預けて自立すべき」というアドバイスも,女性を罪悪感から解放しない。育児を24時間楽しんで全くストレスを感じないという女性はいないし,育児も仕事も100%こなすスーパーウーマンもいないからだ。
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