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はじめに
母子の健康にとって母乳栄養は重要である。世界保健機関(World Health Organization:WHO)と国際連合児童基金(United Nations Children's Fund:UNICEF)は,1989年に共同で「母乳育児成功のための10ヵ条Ten Steps to Successful Breastfeeding」を発表した1)。そして現在わが国においても,母乳育児や愛着形成を鑑みてカンガルーケアが当たり前となり,分娩台で生後30分以内に乳頭吸啜を行なっている施設が多い。母乳育児をすることは母子および社会にとっても利点が大きく,「健やか親子21」においても母乳育児の割合が増加することが目標として掲げられている2)。そして完全母乳栄養法が赤ちゃんに優しいと考えられるようになり,BFH(Baby Friendly Hospital:赤ちゃんにやさしい病院)を獲得する産院施設も増加してきている。
一方,母親が母乳栄養を望んでいても現実に母乳栄養から混合栄養や人工栄養になることもあり,母乳栄養を勧めることが母親にとっては苦痛を伴わせる危惧があるという現実もある3)。そこで本研究は母乳栄養の確立に関連する要因を明らかにすることを目的とした。それらを明らかにすることによって,母乳栄養が確立する要因に焦点を合わせて,妊娠中から関連する要因を強化できるような保健指導や,適切な授乳指導の考案が可能と考えられる。
なお,一般に母乳育児とは直接授乳を意味しているが,本研究においては対象者の中に一時的な搾乳による母乳授乳を行なった人も含まれている。よって児への栄養方法に主眼をおいて,方法の違いにより母乳栄養,混合栄養,人工栄養という表現を用いることにする。
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