連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・78
差し伸べることができなかった手
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.852-853
発行日 2010年9月25日
Published Date 2010/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101729
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母子の何かが気にかかる
産婦のエバは,誰にも気を許さずにお産を終えた。唯一人間らしい会話があったのは,連れてきていた4歳の娘,イダイとだけだった。イダイは不思議な子どもで,夜中の間ずっと多弁に語り,クリニックのおもちゃで遊び続けていた。髪の毛は長い間くしを通していないようでくっつき,身体全体からごみのようなにおいを放っている。
この母子は何か変だ。何かかかわりが必要なはずと感じた私はまずイダイと仲良くなり,次に会った時に水浴びをする約束をして別れた。
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