連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・69
大雨のなか生まれてきた命
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.1150-1151
発行日 2009年12月25日
Published Date 2009/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101575
- 有料閲覧
- 文献概要
ここの貧困の暮らしに安定はない。雨が続くなか,今日も10年以上違法に住んでいた場所から急に立ち退かされた家庭で,お産があった。
追い出された彼らは行く場所がないので,目の前の道路に簡易の家を造り(おかげで道路は半分になり1車線分しか幅がない),わずかな家財道具一式を満載して,ブルーフライのシートの下で暮らしている。6畳ぐらいのスペースにひと家族,大人が7人,子どもは6人いた。産婦がいる場所は,かろうじてところどころ破れた布で仕切りが作られている。すき間だらけの家のなか,どこでもその気になれば外から見える状態だ。電気もなく,小さな簡易ランプが唯一の光だ。うっかり光を見ると,夜目がしばらく利かなくなる。子どもが時々,ダンボールや布のすき間からのぞいている気配が感じられる。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.