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はじめに
2016年5月11日,フランス通信社(AFP通信)から次のようなニュースが報じられた。
“先月,70歳で第1子を出産したインド人女性が10日,AFPの取材に応じ,母親になるのに老い過ぎていることはなく,出産によってようやく人生を全うできたと語った。
ダルジンダー・コー(Daljinder Kaur)さんは,北部ハリヤナ(Haryana)州の不妊治療院で体外受精(IVF)治療を2年間受けた末,先月19日に男児を出産した。
79歳の夫との46年間の結婚生活で子どもは授からず,ほぼ望みを捨てていたという。インドでは,不妊は神の呪いとされることもあり,夫妻はあざけりの対象だった。
「神への祈りが届いたのです。人生を全うしたように感じます。私は自力で赤ん坊の世話をしていますし,とても元気です。夫もとても協力的で,一生懸命に手伝ってくれています」。コーさんは北部アムリツァル(Amritsar)で,AFPの取材にこう語った。
コーさんは自身の年齢を70歳前後としている。一方,不妊治療院の発表文では72歳とされている。インドでは出生証明書を持たない人が多く,自分の正確な年齢が分からないことは珍しくない。
国立不妊治療・体外受精児センター(National Fertility and Test Tube Baby Centre)によると,夫妻の卵子※と精子を使用して妊娠した男児は,誕生時の体重はわずか2キロだったが,今では「健康で元気」だという。※第三者から卵子提供を受けたと考えるのが自然である:筆者注。
コーさんの夫はAFPの取材に対し「私たちが死んだら子どもはどうなると言われます。でも,私は神を信じている。神は全能で至る所にあり,すべての面倒を見てくれます」と語った。
インドでは2008年にも,同じく体外受精で妊娠したウッタルプラデシュ(Uttar Pra desh)州の女性が,72歳で双子を出産したと報じられている。”3)©AFP。
コーさん夫婦の幸福感はさておき,宗教や文化の違いはあっても,ここには日本の家族にも共通したいくつもの現代的な課題が隠されている。
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