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はじめに
少子化にともなって分娩数は減少しているが,それを上回るスピードで産科医師不足が進行し,分娩取り扱い施設,分娩取り扱い医師ともに減少の一途をたどっている。このため,地域によっては里帰り分娩を希望していても分娩場所が見つからず,やむを得ず里帰りをあきらめなければならない妊婦さんも出てきている。都内でも分娩取り扱い施設が少なくなっており,多くの施設では分娩予約を一定数に制限しているため,妊娠初期を過ぎてしまうといくつもの施設で分娩予約を断られるケースが少なくない。このような状況で,産科医師1人あたりの分娩取り扱い数が増え,しかも不妊治療や妊娠年齢の上昇,合併症妊婦の増加などで分娩におけるリスクが高まってきており,産科医師の過重労働が社会問題となっている。
産科医師が日々の診療で疲弊し,余裕がなくなっている状況のなかで,さらに手間をかけて母乳育児を支援していこうという意識を持つことは難しくなってきている。わが国においてBFH(Baby Friendly Hospital)の意義は医療者にも妊産婦にも認識されているにもかかわらず,認定施設はまだまだ少ない。東京都内では2002年に日本赤十字社医療センター(以下,当センター)が認定を受けて以来,残念ながらその後新たに認定施設は増えていないのが現状である。
新たにBFHの認定を受ける場合も,また,認定をすでに受けた施設が継続的に活動を続けていく場合においても,数人の熱心な職員が個人レベルで取り組むのではなく,スタッフ全員が意識統一をはかり,施設全体として母乳育児支援に取り組んでいこうという姿勢が大切である。たとえば助産師が母乳育児支援を推進したいと思っても,産婦人科医師,小児科医師,薬剤師をはじめとした院内スタッフとどう協働し,意思疎通をはかりながら活動を進めていくかはきわめて難しい問題であり,そのためにBFH認定までのハードルが高くなってしまっているのではないだろうか。
本稿では,当センターにおいて,医師,助産師,薬剤師ら各スタッフが院内外でのカンファレンスなどを通じ,どのように連携して活動を推進しているかについて実例を紹介する。読者の方々が今後の母乳育児支援において産婦人科医師との意識統一を進めていくための参考となれば幸いである。
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