特別寄稿
思春期を対象にしたセクシュアリティに関する研究の倫理
大石 時子
1
1天使大学大学院
pp.312-317
発行日 2009年4月25日
Published Date 2009/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101413
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はじめに
思春期は第2次性徴の開始によって定義され,性行動が開始もしくは活発化する時期である。そのための望まない妊娠や性感染症罹患などの問題は,日本の国民運動である健やか親子21の主要課題の1つに掲げられるほどである1)。これらの問題を解決していこうとする時,思春期の心理や行動を理解することは不可欠であって,研究はその期待される役割を果たすべきである。
しかし,研究の対象が思春期にある若者のように成人ではない場合は,インフォームドコンセントなどの研究倫理の原則についてどのように考えたらよいのであろうか?
特にセクシュアリティのように,プライベートな問題かつ文化的社会的規範が人々に強く意識されている問題は,研究にどのような倫理上の配慮を必要とするのであろうか?
過去におけるいまわしい医学実験の中には,子どもなどの未熟性を利用して搾取した研究もあった。それらへの反省からニュルンベルグ綱領,ヘルシンキ宣言などが成立してきたが,それらをもっと具体的にするため,1974年,米国の諮問委員会が創設され,“Ethical Principles and guidelines for the protection of human subjects of research”(以下は通称のThe Belmont Reportを用いる)が完成,発表された2)。世界的にも研究倫理の原則的ガイドラインと認められている,このThe Belmont Reportを青写真に,思春期を対象にした研究の倫理のあり方を考察してみたい。
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