特集 現代の家族―神話を超えて
セクシュアリティと家族
中田 ひとみ
1,2
1訪問看護ステーション堂山
2性と生を考える会
pp.618-623
発行日 2002年9月25日
Published Date 2002/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903893
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はじめに
今年の5月半ば,王子動物園のパンダのニュースをご存知だろうか?雌のタンタンが誘っても相手にしないコウコウに性別疑惑が浮上し,調べた結果「雌によく似た生殖器」が認められ,「生殖能力のない雄」か「雌雄同体」の可能性があると報じられた.コウコウはタンタンに比べ体重が30キロも重く,その大きな体格から誰も雄であることを疑っていなかったという.実は雌雄同体の生物は自然界にはたくさん存在する.また,哺乳類における性の分化過程を考えると,さまざまなレベルで身体の性が男女に未分化の状態があっても不思議ではない.また,人間も含め「オスかメス」かを区別する要素は案外単純だ.誰も街行く人の裸,まして性器や染色体までを確認して判断するわけではない.私たちが思っている「性」という概念は,実はかなりあやしいものかもしれない.同時に,人間=社会の都合で,夫婦・子ども=家族を作ろうとしたこの一件は,ある意味で性と家族をめぐる象徴的な事件にみえる.
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