特集 思春期の健康—現代の抱える心の問題
思春期の性=生—セクシュアリティの受容と意志決定
高村 寿子
1
1自治医科大学看護短期大学
pp.445-450
発行日 1998年6月10日
Published Date 1998/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901785
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思春期の性=生
セクシュアリティの特徴と求められる能力
思春期とは,周囲の人々に甘え,依存していた子ども時代から,「自分とはいったい何者なのか」と自我にめざめ,1人の自立した男として,女として大人社会へ羽ばたく時期である。身体的にも精神的にも激しく揺れ動きながら,個人差はあれ,誰もが1度必ず通過する時期でもある。
思春期の二次性徴のメカニズムは,小学校高学年から中学生にかけて始動されるアンドロゲンやエストロゲンなどの性ホルモンの活動に深く影響される。その結果,男子では声変わり,肩幅の拡大,筋肉発達,性毛・脇毛発祥,精通,女子では乳房発達,骨盤の発育,皮下脂肪の発達,性毛・脇毛発祥,初経発来など,さまざまな二次性徴が出現する。中でも男性の初めての射精(精通現象),女性の初めての月経(初経の発来)は,将来母性・父性となるための生殖機能と,男女の性意識・性行動の影響要因としてその意義は大きい。これらの特徴は単に身体的変化にとどまらず,心理的にも多くの影響を及ぼしている。たとえば,各種ホルモンが活発に分泌され,脳の働きが活発になると,自分の内面を強く意識するようになる。そして,青年期の発達課題である自分を見い出す自己同一性(アイデンティティ)を確立していくために,自己顕示欲あるいは劣等感が強くなり,精神的動揺が激しくなる。
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