連載 月便り・7
月読の持てるをち水
志賀 勝
1
1月と太陽の暦制作室・〈月〉の会
pp.664-665
発行日 2008年7月25日
Published Date 2008/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101262
- 販売していません
- 文献概要
月読の持てるをち水い取り来て
君に奉りてをち得てしかも
『万葉集』に載る歌ですが,意味は月読(神話上の月の神)の持つよみがえりの水を持ってきて年長者を長生きさせたいものだ,といったもの。「をち」の言葉が二度使われていますが,長く不明の言葉になっていました(をはwoの発音で,古語にあったものですが,残念ながらこの母音は日本語から失われたものです)。
この「をち水」とか「をつ」の意味が正確にわかってきて,実はまだ百年もたちません。いわば失われた日本語でした。解明されたのは,ニコライ・ネフスキーや折口信夫らの民俗学の仕事を通してでした。漢字で書けばをち水は「変若水」。これだと意味が解けます。つまり,若返りやよみがえりを意味する言葉が「をつ」だったのです。しかもその若返り,よみがえりの鍵は月が握っている……。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.