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■「高齢患者の急増」というシナリオを変える鍵とは
後期高齢者が急増し生産人口が激減する2025年には,元気な高齢者は「支える側」にまわらなければ,社会を持ちこたえられないと言われている.これまで「支えられる側」と見なされていた者も,できることをしたり,何らかの役割を担っていくことが望まれている.社会的役割を持つことは,主観的健康感や幸福感,QOL(quality of life:生活の質)と関連していることもさまざまな研究で明らかになりつつある.また,健康行動を実践・継続するためには人のつながりが重要であることも社会疫学的な調査でわかってきた.こうした中,平成25(2013)年に改正された「健康日本21(第二次)」には,ソーシャルキャピタル(人々の絆,信頼,助け合いの規範)の概念も反映されるようになった.特に保健衛生推進員ら地域住民組織が健康づくりに貢献することが一層期待されている.しかしながら,一方で彼らの中には「押しつけられ感」「やらされ感」が大きくなっているという声もある.昔ながらの地縁による組織も大切な一方で,新しいつながりや地域資源の発掘も課題である.
住民が自らの意思で役割を持って活躍できる機会は,どうしたらつくれるのだろうか.本稿では,「コミュニティヘルス」という概念を基点に,患者や市民が超高齢化社会を支える一員として活躍できる場づくり,役割づくりに関する方策を提案する.筆者が活動をしている山形県南庄内地域の例も交えながら,地域の「人財」を育んでいくヒントを示したい1).2005年に合併によって東北地方で屈指の広さを誇る自治体となった鶴岡市と三川町からなる南庄内地方では,市,町,県(保健所)といった行政,地区医師会や病院などの医療者,介護や福祉に関わる人たち,そしてわれわれ慶應義塾大学や地元大学の関係者が,それぞれ柔軟なかたちで連携をしながら,多層的なコミュニティヘルスの取り組みを進めている.
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