連載 筆から想いは広がって・2
身を包み,あでやかに舞い
乾 千恵
pp.442-443
発行日 2007年5月25日
Published Date 2007/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101010
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どうしてその字を書いたのか,自分でもわからない場合がある。「衣」も,その一つだ。
この書は,見てくださった方たちから「いかにも袂や裾がひるがえっているようだ」「市女笠をかぶった女性のよう」という声を頂いてきた。
この「衣」から思い浮かぶのは,確かに洋服というよりは和服だろう。「ころも」という読み方そのものも古めかしく,天人伝説にある「天の羽衣」を連想させる。地上に降りた天人が,これを羽織ると空へと舞い上がり,天へ昇っていくというものだ。風をはらんで,ふわっと広がる布の形は,空への道につながるかに見え,なるほどね,と思うのだが,意外にも,「かぐや姫」の「竹取物語」にも,天の羽衣が出てくる。
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