書評
助産師として,反省と展望をもって読みたい 『陣痛促進剤 あなたはどうする』
芦田 千恵美
1
1大谷助産院
pp.348
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100717
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本書は『病院で産むあなたへ―クスリ漬け出産で泣かないために』('95年)の全面改訂版である。「陣痛促進剤による被害を考える会」が発足してから15年。地道な活動によって陣痛促進剤被害は徐々に社会問題として認知されるようになったものの,未だに悲惨で重篤な被害が起きている。その現実を変え,これ以上被害を出さないことを強く願ってこの本は編集された。
被害事例を読んでいくと,自分自身の病院勤務の頃が思い出された。「予定日超過」のため陣痛誘発を試みたが,途中で胎児の状態が悪くなり帝王切開になったケース。順調に来ていた陣痛の波が途中から間延びしたため促進剤を使って分娩に至らせたケース等々。どれも幸いにして母子共に「無事」にお産は終了した。けれどもそれは,もしかしたら危機一髪,すれすれのところで救われた「無事」だったのかもしれない。いや,きっとそうだったのだろう。病院の中では陣痛の誘発も促進も日常的医療処置の1つになってしまった現在,医療者の薬に対する感覚の鈍麻が事故に繋がったのは事実であろう。しかしそれ以上に問題なのは,お産にかかわる医療者の非人間的なありようなのではないか。そこには産む人や生まれてくるいのちへのいたわりや優しさ,尊厳といったものが感じられない。もっとも大切なものが置き去りにされているのだ。医師,看護師,そして助産師はそれぞれの立場で何をどうすべきだったのか,悲惨な被害の実態を読み進むうちに自ずと答えが見えてくる。
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