連載 今月のニュース診断
ヒトクローン胚の人為的作成と着床前診断―人がヒトを利用・治療・選別すること
斎藤 有紀子
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1北里大学医学部医学原論研究部門法哲学・生命理論
pp.284-285
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100716
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クローン胚解禁の議論
クローン人間「作成」が禁じられている日本で,ヒトクローン胚作成解禁の議論が始まっている。
昨年12月,内閣府総合科学技術会議生命倫理専門調査会は,「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」中間報告書をまとめ,研究目的でヒト胚を新たに作ることを容認し,ヒトクローン胚作成について賛成・反対両論を併記した(毎日2003年12月28日)。
研究目的で受精卵を人為的に作ることや,ヒトクローン胚を作ることは,現在禁止されている。「人の生命の萌芽」であるヒト胚を軽視することは人間の尊厳を損なう可能性がある,人がヒト生命を「手段としてのみ」利用する目的で作成・破壊・利用することは許されるのか,社会にもたらされる「恩恵」と「ヒト生命の尊重」という価値観をそもそも秤にかけることができるのかなど,困難な問いが山積する中で,不妊治療終了後,廃棄されることが決まった胚についてのみ,限られた条件の下で,由来カップルの同意を得て,ES(胚性幹)細胞研究が行なわれているのが現状だ。
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