グラフ 生殖生理と走査電顕
Ⅵ.着床前胚の超微細構造
北井 啓勝
1
,
大庭 三紀子
1
,
鈴木 秋悦
1
,
飯塚 理八
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.504-505
発行日 1989年6月10日
Published Date 1989/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208009
- 有料閲覧
- 文献概要
受精卵は卵管より子宮に移動する間に球状の単一細胞から内部に腔をもつ胞胚に分化する.8細胞期まで胚の各細胞は球状であり細胞間結合は形成されておらず,透明層を除去すると機械的に分離できる。8細胞期に胚の細胞境界が光学顕微鏡では不明瞭となり,胚は一塊となる.この現象はcompactionと呼ばれ,マウス,ヒトを含むさまざまな胚で観察され,電子顕微鏡上では細胞結合の形成が認められる.細胞質内では,この段階まで球状であったミトコンドリアが伸長し,クリスタが増加する.核内の核小体は,凝集した状態より網状になる。生化学的には,この時期よりグルコースの代謝および酸素消費が増加して,ATPの合成が活発化する。この細胞間結合の形成とそれに続く胞胚腔の発生は,複雑な形態形成過程の最も基本的な現象と考えられる.胚が子宮内膜に接着して着床するには,胞胚の形成が不可欠である。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.