特集 妊娠期の新・臨床栄養―成人病は胎児期につくられるか
成人病胎児期発症説(Barker説)を知っていますか
福岡 秀興
1
,
山崎 晋一郎
1
,
塚本 裕子
1
1東京大学大学院医学系研究科国際生物医科学
pp.722-727
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100584
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はじめに
最近,成人病と言われている高血圧,インシュリン抵抗性,骨粗鬆症は,子宮内胎児発育不良に強い相関性があることが指摘されるようになり,Barkerが唱え始めたその説は21世紀最大の医学仮説とも言われている1)。これは初期発達段階での低栄養状態は成人病発症を引き起こす可能性が極めて高いことを意味する説であり,動物実験でもその証明がなされつつあって,胎児期に規定される分子や細胞レベルでのプログラミングにより成人病発症の可能性が決定されると考えるのである。発達段階のある時期が,これらのプログラミングを決定してしまうcritical windows of development(成長発達の臨界期)になると考えられる。この成人病胎児期発症説(FOAD:fetal origins of adult disease:Barker説)は,妊産婦を扱う周産期関係者はぜひ知らねばならないものと考え,ここに紹介したく筆を取った。本稿では,誌面の関係上,動脈硬化・高血圧症と胎児期栄養についてのみ話を進めたい。
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