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はじめに
母子保健の指標として重要なものは,妊産婦死亡率,周産期死亡率,乳児死亡率,出産10万対の妊産婦死亡数である。妊産婦死亡率は,死産の定義が国により異なるため,国際比較の際には出生10万対が採用されている。周産期死亡率とは妊娠満22週以後の死産数と生後1週未満の早期新生児死亡数を合わせたものを分子とし,出生数と妊娠満22週以後の死産数の和を分母とし,出産千対で示される。国際比較の場合には,出生数のみを分母とする。
わが国の妊産婦死亡率(出産10万対)は,表1に示したように1950年161.2から1980年19.5と,先進国の中では比較的高い率を示していたが,1990年以降顕著に減少し,現在では世界のトップクラスにある。周産期死亡率は(出産千対)は,1979年以降のものが公表されている。1979年には21.6であったのが,2000年には5.8と減少傾向が観察されている。乳児死亡率(出生千対)は,1950年60.1であったのが,2000年には3.2と減少し,欧米諸国と比較しても低率となっている。このように,国レベルでの母子保健の現状は極めて良好であると言えよう。
一方で,少子化が急速に進んできた。出生率(人口千対)は,1950年28.1であったのが,2000年9.5と,減少している。合計特殊出生率注)は,1950年には3.65であったのが1960年には2.00と減少し,その後1970年代前半までは2.0~2.1と安定していたが,1980年代から減少傾向が始まり,2001年には1.33へと減少した。
こうした状況下で,女性はより健康で安全な妊娠・出産を求め,生まれてくる児のためにより良好な妊娠期を過ごしたいと希望していると考えられる。そのためには現在の妊娠可能年齢の女性の抱える栄養学的問題点を明らかにしたうえで,良好な妊娠転帰を迎えるために必要な栄養指導とは何かを考える必要がある。本稿ではわが国の妊娠可能年齢の女性が抱える健康上の問題点を明らかにしたうえで,最近の妊娠期の栄養に関する新しい知見とあわせて,これからの栄養指導に必要な事項について述べる。
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