特集 「対話」がひらくリスクを超えた関係
周産期医療をめぐる紛争と対話
和田 仁孝
1
1九州大学大学院・法学研究院
pp.455-460
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100533
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はじめに
近年,医療事故をめぐる民事訴訟は増加の一途をっている。また,裁判所も次第に医療者側に対して厳しい判断を取る傾向が強くなってきている。とりわけ,周産期は事故のリスクが高く,紛争が生じる可能性や訴訟で認定される賠償額も高額になりやすい傾向があると言われる。これは我が国だけの傾向ではなく,先進国に共通する悩みであり,周産期医療に固有の困難な課題であるということができよう。いずれの国でも,周産期医療をめぐる訴訟は,医療事故の中でも多くを占めており,医師損害賠償保険の支払額でも,周産期医療をめぐる事故が圧倒的な比率を占めている。
ここでは,なぜ,周産期医療をめぐって紛争が多発するのか,そのよりよい解決の方策は何かについて,「対話」の重要性に着目しながら考えてみたい。紛争状況とは,真の意味の対話が喪われたディスコミュニケーションの状態であると言える。それゆえ,紛争の発生やその激化は,この医療者と妊産婦の間のケア理念に根ざした対話によって,防いだり,適切に方向付けたりすることができると考えられる。
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