プライマリ・ケアのリスクマネジメント1
抗菌薬投与をめぐる医事紛争
長野 展久
1
Nobuhisa Nagano
1
1東京海上メディカルサービス株式会社/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
pp.778-782
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101021
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プライマリ・ケア,総合診療を熱心に勉強されている読者の皆さんは,日頃から医学書籍や医学雑誌の論文に目を通し,さらに定期的な学会・研究会への参加を通じて,最新の医学知識を精力的に習得されていると思います.そして『JIM』のような医学雑誌には,診断が非常に難しかった症例や,誰もが陥りやすいpitfallが数多く紹介され,教訓的な症例を机上でも体験することができるようになりました.そのような知識の積み重ねにより,日常診療で担当する症例を,速やかに,かつ適切な診断・治療へと導いていくというのが,理想的な「あるべき姿」であることはいうまでもありません.
その一方で,医学にはまだまだ解明されていない未知の領域も非常に多く,実際の臨床では「教科書通り」の症例ばかりとは限りません.それだからこそ,できる限り「見逃し症例」を減らすための努力が必要なのですが,もし不幸にもpitfallに陥ってしまった場合には,どのような事態に巻き込まれるのでしょうか? おそらく圧倒的多数の先生方は,「私がミスを犯すはずがない」という認識で診療に当たっていると思いますので,まさか自分が医事紛争の当事者になろうとは夢にも思わないと思います.ところが,その「まさか」が現実となる危険性は,日々の臨床現場に常に潜んでいることを,実際の紛争例を通じて考察してみたいと思います.
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