連載 とらうべ
医療紛争はなぜ多い
川村 隆夫
1
1盛岡赤十字病院
pp.179
発行日 1996年3月25日
Published Date 1996/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901429
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戦後五十年の間に,敗戦という大きな犠牲を払って手に入れた「平和と豊かな社会」であったが,依然として「貧しさ」を感じるのはなぜだろう。それは「モラルの崩壊」ではないだろうか。
子が親を殺す,親は子を捨てる,夫が妻に保険金をかけて殺すなど,職業倫理の退廃だけでなく,人間の最も基本的な親子・夫婦の情愛までが狂ってきたような気がする。「石が流れて木の葉が沈む」という言葉はあり得べからざることの譬えだが,「まさか」と思うような事件が,「またか」とあたりまえのごとくとらえられている社会が恐しい。そこには共生もなければ,人間同士の響き合いもない。
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