特集 周産期に子どもを亡くした家族に寄り添う
日本の周産期医療におけるケアシステムの現状調査
西巻 滋
1
,
横田 俊平
1
1横浜市立大学医学部小児科
pp.936-940
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100425
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はじめに
日本の新生児死亡や乳幼児死亡の低さは世界のトップであり,それは日々,現場で汗する医療従事者の努力の結実である。医学は命を救うために進歩し,われわれは常にその方向を見つめ,そのための努力を惜しまなかった。しかし,亡くなった胎児,新生児,乳幼児とその家族への対応は置き去りの感があったことは否めない。最近,児を失った家族のためのグリーフケアなどの精神的サポートの重要性が言われ1-11),それは周産期の現場でも取り組まれている2,6,12-16)。しかし実際の臨床現場で多くの小児科医は,家族の悲しみへの対応まで手が回っていないのが現状ではないだろうか。
ここでは,われわれが厚生労働省研究子ども家庭総合研究事業「乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断のためのガイドラインの作成およびその予防と発症率軽減に関する研究」のなかで調べた,日本の医療機関におけるグリーフケアシステムの状況について述べる。
※ここでお断りしておかなければならない。それは,このデータは緊急入院後の短期間に亡くなった症例についてのアンケートであり,「周産期の死」に限っていない点である。そのため,早期新生児死亡例は含まれるが,流産例,死産例は含まれていない。また,調査対象に産科施設は含まれていない。それでも日本の医療機関におけるグリーフケアの全体像は見えてくるのではないかと考え,この特集号に寄稿する。
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