研究
HTLV-I抗体陽性のKさんが母乳哺育を選択した理由
芦田 千恵美
1
1第2足立病院
pp.453-459
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100212
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はじめに
HTLV-I(ヒトTリンパ球好性ウイルスタイプI)は母乳を主たる感染ルートとして母子感染することが知られている。ところが,栄養方法(直接母乳,冷凍母乳,人工乳)ごとの感染率について,現状では,おおよそのデータは発表されているものの,未だ研究途上であり,推奨すべき栄養方法についての結論をみるに至っていない1)。そのようななかで抗体陽性妊婦はさまざまな葛藤や苦渋を抱えつつ栄養方法を選択しているのが実情である。
福田は長崎県におけるATLウイルス母子感染予防事業にかかわった医療者へのアンケート調査を集約するなかで抗体陽性の告知が母親やその家族にとっていかに大きな影響を与えているかを報告している2)。医療者,とりわけ看護者はそこに生じる問題に対して十分な配慮と共にきめこまやかなケアを提供することが望まれている。そのためには抗体陽性妊婦の内面の思いを知ることが必要不可欠である。しかし,抗体陽性妊婦がどのような思いで自身の栄養方法を選択し,実際にどのような思いで子育てをしているかについての研究はほとんどなされていない。
本研究では,HTLV-I抗体陽性のKさんが母乳哺育を選択するに至った体験の語りをとおして,その経験への理解を深め,今後のケアへの課題を検討した。
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