連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・10
心の傷を超えた「母娘」
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.82-83
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100017
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母,ジュリーの産科歴
ジュリーとベルは本当の母娘ではない。私はこの母娘と10年来の付き合いで,かなり親しい間柄だ。2人がもつ心の傷も少しはわかっているつもりだった。だが,この母娘がお産を通じて見せた行動は私を驚かせ,配慮が足りなかったと悔いも残った。
ベルはいまでも「お産は怖い」という。母親ジュリーの心の傷は彼女の産科歴にある。初めての妊娠で過期産からの胎内死亡。その後,死亡胎児からの子宮内感染で意識不明になり帝王切開を受けた。それから半年の間,感染による切開傷の離開を繰り返し,何度となく死線のうえをさまよった。いまでも彼女のお腹には自然排膿した痕と大きな切開創がケロイドとなって残っている。ジュリーはそのときの感染がもとで妊娠できない身体となり,想像妊娠を起こした経験ももつ。
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