連載 新・健康格差社会 どこまで解明・対策は進んだか・1【新連載】
何が心と健康を蝕むのか①—健康格差の発見から現在まで
近藤 克則
1,2
1千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門
2国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学評価研究部
pp.414-419
発行日 2021年5月10日
Published Date 2021/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201659
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連載の初めに
健康格差の発見から現在まで
拙著『健康格差社会—何が心と健康を蝕むのか』1)は2005(平成17)年に出版された。その元になる連載を書いていた2003(平成15)〜2005年当時は,「健康格差」「健康の社会的決定要因」,それらを解明する「社会疫学」という言葉すらまだ知られていなかった。欧米では,健康格差やそれを生み出す社会的要因に関する研究が進みつつあった。が,まだ「平等な国」という幻想が残っていた日本では,健康格差の存在自体が知られていなかった。
それでも私の目には,健康格差が日本にもあることと,健康の社会的決定要因の重要性は明らかだった。だから,海外の膨大な知見と日本でのわずかな実証データを基に,おそらく日本にも広く健康格差は存在し放置すべきでないこと,そして多くの理論(仮説)や文献を踏まえて,その生成メカニズムと取るべき対策の考え方を,そして黎明期である社会疫学の課題と可能性を拙著で論じた。
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