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はじめに
筆者は,大学卒業後に急性期と療養型の一般病棟で看護師として勤務した後,2015(平成27)年9月に第2育秀苑地域包括支援センター(以下,当センター)へ入職した。病棟で勤務していた頃には,地域包括ケアや医療と介護の連携という概念がまだ一般的でなく,自宅に帰りたくても帰れない高齢の患者さんを数多く目にした。ベッドの上で,日に日に意識があいまいになっていく患者さんに対し,無力感を感じたことが現在の職に就くきっかけの1つとなった。
当センターは,東京都練馬区(図1)の最も東に所在し,板橋区,豊島区,中野区との区境の地域を担当している。昔から少し高級な住宅街であった小竹町や,昭和の時代は賑わった商店街がある栄町,小さな古アパートが多い旭丘,幹線道路があり高齢化率が低い羽沢といった地域がある。
当センターでは高齢者の相談支援や地域づくりを行っているが,保健師は医療的な視点のもと,介護予防・疾病予防活動を推進する役割を担っている。医療と介護の連携においては,支援者の自己満足とならないよう「活動が地域のプラスになるか」という視点を意識している。具体的には,「在宅療養や認知症に関する情報を発信する」「認知症の理解と支援のネットワーク作りを進める」「介護予防に取り組める地域資源を創出する」の3点を柱として取り組んできた。
本稿では,この3点のうち「介護予防に取り組める地域資源を創出する」について,取り組みの中で感じた課題やキーポイントなどをお伝えできればと思う。
東京都練馬区にある第2育秀苑地域包括支援センター(以下,当センター)では,「介護予防に取り組める地域資源を創出する」を活動の柱の1つとし,地域住民の声を拾って介護予防・交流の場の立ち上げ支援を行っている。地域の「やりたい」の声をもとに実現した「旭丘しあわせ食堂」と「街かどケアカフェ」の取り組みを紹介する。
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