特集 地域包括ケアの進化
「まちづくり」としての地域包括ケア
東内 京一
1
1和光市保健福祉部
pp.557-561
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208481
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日本の社会保障制度を維持していくためには,労働人口,高齢者人口および年少人口のバランスが重要であることは,周知のところであるが,わが国の人口動態は,1970年代半ばから続く出生数・出生率の長期的な減少により,15歳以上64歳未満の生産年齢人口が減少傾向にあり,また平均寿命の延伸により65歳以上の高齢者は右肩上がりの増加の一途をたどる少子高齢社会である.団塊の世代が後期高齢期にさしかかり社会保障費の爆発的な増加が起こる,いわゆる2025年問題が目前に迫る中,今後ますます高齢者の生活課題等の顕著な増大が想定されている.高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで,可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的なサービス提供体制,つまり地域包括ケアシステムの構築が急務であり,その中で,特に生活の基盤となる住まいは「まちづくり」の最も重要な課題と考える.
それはひとえに,住み慣れた自宅や地域で介護サービスを受けられることで,高齢者と市民の幸せにつながるだけでなく,社会保障費の持続可能性という観点から効果が期待される.事実,2014(平成26)年3月末の要介護認定率は,全国が18.2%,埼玉県が14.3%に対して,和光市は9.4%である(図1).第6期介護保険料も,全国平均に対して,和光市は,1,000円程度下回る4,228円の実績を築いている.2003(平成15)年から全国に先駆けて介護予防と在宅介護の限界点を高めてきた和光市の政策に基づく取り組みは,現在「和光モデル」と言われ,厚生労働省も先進自治体例として発信している.
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