連載 ナカイタ発 保健師へのつぶやき・69【最終回】
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中板 育美
1
1武蔵野大学
pp.255
発行日 2019年3月10日
Published Date 2019/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201146
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保健師は,住民一人一人を尊重し,個々の集合体としての家族システムを捉え,人々が主体的にかつ豊かに生き抜く力を支えることにこだわり続けてきました。切り口や制度,施策名が変わっても,この絶え間ない繰り返しから蓄積してきた知識や知恵,支援技術があります。しかし,多くの事業が積み上がり,しかも,分散配置・少人数配置のために,目の前で必要とされる個別支援や健康なまちづくりのチャンスに気付いても,それを拾い上げて生かす機会,つまり創意工夫を案出する機会が奪われているという声を随所で聞くようになりました。
規定の事業を繰り返すだけでは,まさに今,声高々に要請される「地域共生社会」,さらには,年齢や障害を問わず包括的に相談できる体制(地域丸ごとを我がことに!)からは遠ざかるばかりではないでしょうか。公衆衛生従事者である私たちの対象には,保険制度では解決できない,複雑で,さまざまな世代にわたり多重する問題に苦悩する家族等も含まれます。生活困窮や家族機能不全,暴力環境にある家族などは,虚勢の裏で内実は罪責感や劣等感を抱いているものです。
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