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今回は,大隅地域の保健師人材育成の取り組みについて,もう少し具体的に紹介します。その前に昔話になりますが,筆者が入職して以降,10年間は鹿児島県内のどの保健所も管内保健師研修会を定期的に開催していました。研修会等を通じて地域の保健師皆が見知った間柄で,当時は「顔の見える関係」などというワードは必要なかったように思います。市町も保健所もお互いが身近な存在で,業務のことを気軽に相談できる関係があったと記憶しています。その後,業務分担による保健師業務が主流になってからは,大隅地域も管内の保健師が集まる研修が縮小され,新任期や中堅期の保健師はお互いの顔が見えず,近隣市町に気軽に業務のことを相談できる状況ではなくなりました。そのことへ危機感を抱いた統括等保健師は,既存の保健師研修を見直し,2016(平成28)年度に将来を見据えた人材育成に着手しました。
管理期保健師は今後次々と定年退職となることから,統括等保健師連絡会の中で,より効果的な人材育成を行うために,新任期,中堅期,管理期のどの期を対象にすべきか検討した結果,ある程度の行政経験や,各期への波及効果が期待できる中堅期を対象に5回コースの研修を企画することになりました。統括等保健師から中堅期保健師に期待したい事項は,地域包括ケアにおける保健師の役割を理解することと,アセスメント力の強化でした。そのため,「地域包括ケア」を中堅期保健師研修のテーマとして研修を企画し,講話以外にT市病院の在宅診療医の訪問診療への同行訪問も計画しました。この同行訪問は,実事例を通じて各受講者(中堅期保健師)のアセスメント力を見ていくために内容に盛り込みました。上記医師および事例宅に対しての協力依頼や調整については,T市の統括保健師が担い,訪問診療への同行訪問が実現しました。その事例を通じて,実際にT市統括保健師が地域包括ケアにどのように関わっているのかを学ぶ機会にもなりました。同行訪問研修では,保健師3人が1グループとなり,事例に関する事前情報やT市統括保健師からの情報をもとに,訪問日までに受講者各自がアセスメントを行い,同行訪問,モニタリング,支援計画を作成しました。また,中堅期保健師研修会の最終日には,同事例に対する模擬地域ケア会議を体験し,地域の統括等保健師の助言を受け,研修全体の振り返りを行いました。
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