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はじめに
2011(平成23)年以降,医療提供体制や地域包括ケアシステムの構築を目指した社会保障・税の一体改革に示された医療系人材養成の在り方に関わる制度面の変化が続いている。
2017(平成29)年1月には,医学教育ならびに歯学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂され,同年10月には新たに看護学教育モデル・コア・カリキュラムが策定された。これらにより,多職種連携の時代に,共通の理念や言語を携え,相互理解・連携協力の下で社会に貢献する人材を育成するための医療人基礎教育の在り方が示されたと言えよう。
カリキュラムとは,各教育機関が立案・運営する教育全体の計画である。モデル・コア・カリキュラムは,全教育機関で共通して取り組むべき内容を標準化・精選化した上で「コア」として抽出し,「モデル」として体系的に整理したものである。各大学におけるカリキュラムの作成の参考となるよう学修目標が列挙されているので,それを見れば,全国共通の教育内容が分かるとも言える。量的には,カリキュラム全体の2/3(または70%)がコアとして示され,残り1/3(または30%)は各教育機関の個性や多様性が反映されることになる。
改訂された医学教育/歯学教育モデル・コア・カリキュラムのキャッチフレーズは「多様なニーズに対応できる医師/歯科医師の養成」である。国際的な公衆衛生や医療制度の変遷を鑑み,国民から求められる医療安全,チーム医療,地域包括ケアシステム,健康長寿社会などのニーズに対応できる実践的臨床能力を有し,専門職としての倫理観を具備した医師/歯科医師の養成を目指している。
一方,看護学教育モデル・コア・カリキュラムは,増え続ける看護系大学(1991年11校→2017年255校)における教育の質保証や卒後実践との乖離が課題となっていることを背景に,社会の変遷に対応し,看護師として必要となる能力を備えた質の高い人材を養成することを目的としている。
これらの動きを踏まえ,全国保健師教育機関協議会(以下,全保教:資料)では,2017年6月,保健師教育モデル・コア・カリキュラム検討委員会を設置し,看護師教育の積み上げ教育としての保健師養成において,卒業時に求められる実践能力と公衆衛生看護学の教育内容を検討した。6回の検討会による議論を経て作成した案は,会員校200校の他,全国保健師長会,日本看護協会等の関係団体のパブリックコメントを経て,「公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム(2017)」(以下,本モデル・コア・カリキュラム)として公表した。以下にその考え方と概要を示す。
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