巻頭言
基礎医学振興策の狙いどころ
田辺 恒義
1
1北海道大学
pp.257
発行日 1964年12月15日
Published Date 1964/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902592
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基礎と臨床とはよく対比されるが,その内容はあまり吟味されていない。医科基礎教室からでる業績はその内容の如何を問わず,基礎医学に属し,病院または臨床教室で行なわれた研究はたとえそれが試験管内実験または動物実験によるものであつても臨床医学に属するような錯誤に陥り易い。文部省科学研究費申請の時の専門分科の選び方が研究内容によらずに所属科名によつてなされているし,所属科と同名の学会へおよそ科名とはかけ離れた研究発表がなされても誰も不思議に思わない。
一体,基礎と臨床とを学問の面から劃然と分け得るであろうか。恐らく不可能であり,また分ける事が如何に不合理であるかは誰でもよく知つている。臨床医学の進歩は基礎的研究の積みかさねによつて達成されているし,如何なる種類の基礎知識が臨床医学の発達に寄与するかの予測がまつたく立てられないことも過去の歴史の示す通りである。したがつて,臨床医学者こそ絶えず基礎的業績に眼を向けこれを育成していくべき立場にあるといえる。基礎医学振興は臨床医学にたずさわる人達の最大の関心事でなければならないはずである。
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