- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
保健師の活動は健康を切り口とし,各種統計データに加え,地域に直接出向いて住民などから直接収集した情報等にもとづいて地域診断を行い,個人や家族を個別的にとらえるとともに,個別支援などを通じて把握した情報から共通点を見出し,住民ニーズに地域特性等を重ね合わせることで,個人の健康課題から集団に共通する地域の健康課題や関連施策を総合的にとらえる視点をもつことが重要である1)。
保健師教育においても,厚生労働省から示された「保健師教育の技術項目と卒業時の到達度」2)において,「地域の健康課題の明確化と計画立案する能力」のうち,「地域の人々の生活と健康を多角的・継続的にアセスメントする」能力や「地域の健康課題に対する支援を計画・立案する」能力は,卒業時に「少しの助言で自立して実施できる」レベルとして到達するように教育すべき内容であることが明確にされた。
このように,地域診断は保健師に求められる基本的な能力であり,教育を担当する大学教員は地域診断の教育方法においてさまざまな工夫をしている3)が,実習フィールドの確保や保健所・市町村の保健師の協力なしでは地域診断の実践能力習得を図ることが難しい。筆者らは実習内容の充実・強化を図ることが,保健所・市町村保健師の負担の増加につながるだけでなく,実習による成果が地域に還元され,活動に発展していくような実習をめざしたいと考えていた。
新潟大学では看護学専攻開設以来,離島である佐渡市をフィールドに地域看護学実習を行っている。佐渡市は地域の特徴が際立った地域であり,その地域特有の暮らしや生活を健康問題と結びつけて理解しやすいのではないかと考え,3年前から地域看護診断実習として,1つの集落をフィールドに,全戸訪問を取り入れた実習を展開している。
この地域看護診断実習においては,地域住民にも学生の学習成果を還元し,保健師と大学教員と共同で実習地域の調査活動にも取り組み,地域住民の健康や生活などのデータを蓄積し,保健師の地区活動に活用してもらうようにしている。このような取り組みのなかで,蓄積したデータをもとに地域住民との話し合いが進められ,地域住民も暮らしやすい地域の活動に向けて動き出してきている。
そこで,地域看護診断実習の概要と学生の到達度を報告するとともに,実習を通して,市町村と保健所,大学が協働で取り組んできたプロセスとそれらの連動について報告する。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.